人気の登山靴スポルティバのトランゴタワーGTX(LA SPORTIVA TRANGO TOWER GTX)を購入しました。
この靴の使用レビューがあまりなかったので、私がこの靴を購入するに至った経緯、試し履きしてみて感じた着用感などをお話ししたいと思います。
購入動機
私は、50歳になって本格登山に目覚めて以来、毎年夏に北アルプスの名峰を踏んできましたが、3年間のブランク期間を経て久々に登山を再開したら、急激に身体機能が衰えていることを痛感しました(2019年10月現在)。
これ以上歳をとって本格登山ができなくなる前に、念願である穂高縦走の夢を果たさなければという焦りが出てきて、こつこつとトレーニングを始めました。
それにあわせ、険しい岩稜帯を安心して歩くためにはそれ相応の登山靴が必要であると感じ、最適な靴を探すことにしました。
岩稜帯に最適な登山靴は?
身体能力が低下しつつある中高年の私にとって、靴選びで必要と考えたポイントは、次のとおりです。
長時間履いても足が疲れないこと
足が疲れないためには、軽い靴が一番です。しかし、軽い靴は素材が薄かったり柔らかいものが多く、そういった靴は地面からの衝撃を受けやすいので、逆に足の疲れを助長させることになります。
また、岩稜帯は常に地面が岩や石でゴツゴツしているので、ある程度ソールが硬くないと、足裏にダメージが蓄積します。
今回の目的からすると、少々重くなっても剛性が高くてしっかりと足全体を包み込んでくれるような靴が、最も疲れを生じさせない靴だと言えます。
怪我をしにくいこと
一番気をつけたい怪我が、捻挫です。
岩稜帯は不安定な地面を歩くため、足首をねじって捻挫することが多いです。それを防ぐためには、足首の強固なサポート力が必要です。しかし、あまり足首を固めてしまうと、軽快な歩行が困難になります。その兼ね合いが難しいです。
また、岩に足をぶつけて怪我をすることがあるので、ソールだけでなくアッパー強度も重要で、特につま先はしっかりと保護されていなければいけません。
岩場で滑らないこと
私が最も重要なポイントと感じている部分です。
岩の斜面で靴が滑れば、そのまま滑落して重大な事故につながります。
できるだけ滑りにくいソールの材質と形状を選択する必要があります。
つま先だけで支えられること
北アルプスの岩稜帯では、少し突き出た猫の額ほどの岩に足を置いて身体を支えなければならない状況に直面することがあります。
こうした危険な状態でも、靴のつま先でけでしっかりと支えてくれなければなりません。
候補にあがった登山靴
上記のポイントを勘案した結果、特にソールに重点を置きました。
フルシャンクの入った硬いソールで、材質はグリップ力で定評のあるビブラムソールと決めました。
ネットでいろいろと岩稜帯向きの登山靴を調べた結果、次の登山靴が候補にあがりました。
スカルパ トリオレプロGTX
コストパフォーマンスに優れている(税込で3,7800円)。
足幅が広めなので、日本人の足に合いやすい。
ローバー チェベダーレ プロ GT
靴紐をしっかり締め上げても足首の動きが妨げられない。
絶妙な足先空間により足指を圧迫せず自由に動かせる。
歩行性と快適性と堅牢性のバランスがいい。
(税込48,400円)
ザンバラン バルトロGT
2.6~2.8mmの厚さを持つ堅牢なレザーをアッパーに採用
足首まわりにはコーデュラナイロンをスリット状に入れ、足首の可動域が広い。
(税込49,500)
スポルティバ トランゴ タワーGTX
足首のホールド感と自由度のバランスや、かかとのフィット感がいい(3D-Flexシステム)。
ソールの接地部分を斜めにすることで衝撃吸収性とグリップ力をUP
(税込49,280円)
スポルティバ トランゴ タワーGTX を選択した理由
なんといっても、岩場でのグリップ力が素晴らしいというレビューが多かったのが一番の決め手になりました。
また、私は、足幅が狭いので、日本人向きに設計された幅広タイプは除外しました。
スポルティバのモデルは、幅が狭そうでスマートっぽかったという印象も好条件でした。
デザインが超かっこいいのも心を揺さぶられましたが、あまり目立ちたくない性格なので、もう少しおとなしめなデザインが逆によかったかも
せめてカラーリング選択を、売れ筋のブラック&イエローではなく、控えめなオーシャン&サルファにしました。
【参考サイト】
スポイルティバのDNAを体現するトランゴシリーズの最高峰、トランゴタワーGTX。>履いた瞬間に感じられる代え難い安心感と…
トランゴ タワーGTX がやって来た
登山靴を購入するときは、試し履きをして自分の足にピッタリフィットするかどうかを確かめることがとても重要です。しかし、私の住む田舎は、近くに登山用品の専門店がないため、遠征に出た時に買って帰るか、通販で注文することになります。
無料でサイズ変更をお願いでき、サポートの良さそうな通販業者を探して、ネットで注文しました。
そして、ついに届きました。
ファーストインプレッション
今までシンプルなヌバックレザーの登山靴を愛用してきたので、この靴を見た瞬間、「登山靴ではない」と思ってしまいました。
どこかオシャレなスニーカーっぽくて、重い荷物を担いで長時間のハードな登山にも耐えられるような堅牢な靴にはとても見えませんでした。
足首部分は、キュッと締まっています。
はたして自分の足首の形にフィットしてくれるのか少々不安・・・・
アウトソールは、ビブラム社のVibram Cubeっていうもの
ソールを見て気がつきましたが、つま先部分は内側(親指側)にカーブしています。
この形状は、つま先にしっかり力が伝わり、狭い足場から足場への歩行など岩場や立ち込みに強い設計とのこと。
つま先部分に「CLIMBING ZONE」の文字
あえてブロックパターンをなくして平たんにすることで、すぐれたグリップ力を発揮するという。
岩稜帯ではこの部分を岩の突起に引っかけ、スリップを防止します。
ソールのかかと部分
あらゆる方向へのグリップ力を高めるための特殊なパターンでデザインしたインパクトブレーキシステムを採用しているとのこと。
ブロックパターンの凸凹や傾斜角度を細かく調整することで、不安定な足場での不意のスリップを軽減するらしい(傾斜が互い違いになっている)。
購入したサイズは、EU標記の41.5(cm換算で26.75cm)
日本で販売されているものは、ハーフサイズがなく、41か42のどちらかを選ばなければならなかったが、これまで履いてきた靴のサイズから、私はその中間がフィットサイズのようでした。
本場直輸入の物はハーフサイズが作られているとのことで、それを注文。結果はジャストサイズでした。
スポルティバのロゴマーク、かっこいいですね。
個性的な装着感
とりあえず履いてみました。
足首がタイトなわりには、足先が少しルーズな感覚があります。
全体的にアッパーがとても硬い感じで、まるで土管の中に足をつっこんでいるようです(笑)。
かかと側面に「3D FLEX」文字
足首をきっちりホールドしながら、自由度を大幅に高めるシステム。
可動域が広がることで登り、下り、トラバース時においても、フラットフッティングがしやすく安全に行動することができるとのこと
足首が十分に屈曲し、ソールの全体が地面に接地するので、スリップしにくいようです。
(出典: SPORTIVA JAPAN Co.,Ltd)
カスタマイズの必要性
アッパーがとても硬くてしっかりとしていて、なかなか足になじんでくれそうにないので、最初からジャストフィット感がないと、この靴はおすすめできません。
私の場合は、内側のくるぶしが当たってとても痛いため、このままではまともに歩くことができませんでした。
サイズ自体は合っているため、何とか自分の足に合うようカスタマイズするしか方法はありませんでした。
内側のくるぶしの下側が接触して痛いため、少しくるぶしを引き上げると痛みがとれます。
もともと私は偏平足気味で、アーチが下がっているため、インソールをアーチ部分に厚みのあるものに替えてみたら傷みが改善するのではと思い、とりあえずインソールを取り出してみました。
なんと、オリジナルのインソールは、ペラペラでとても安っぽい。
ミッドソールで衝撃を吸収するようになっているので、インソールはそんなにしっかりしたものでなくてもよいのでしょうが、それにしてもチープな感じ
ちょうどこれまで愛用してきた靴(アゾロ クンブGV)のインソールにスーパーフィートというインソールを利用していたので、それをオリジナルのインソールと合わせてみたところ、ジャストサイズ。
スーパーフィートは、土踏まずからかかとに掛けて厚みのあるので、アーチ部分が持ち上がります。
(↑オリジナルのインソール)
↑驚異のインソール スーパーフィート
オリジナルのインソールとスーパーフィートでは、こんなに厚みが違います。
そして、履き心地を感触を確かめたところ、ウソのように痛みが消えていました。
恐るべし、スーパーフィート!
ただし、まだまだ強烈な圧迫感があり、足じゅうのところどころがタイトであったりルーズであったり、とてもジャストフィットとはいかないので、少しの間、近郊の山で履き慣らしをすることにしました。
近郊の山で試し履き
近くの山を6時間程度歩いてみました。
● 最も恐れていたくるぶしの傷みは発生しなかった。
● かかとの上部に若干のすき間があってかかと上下に動くため、擦れてマメができかけていた。
● つま先部分は、解放感があるわりには下り坂でも足先が詰まることがなかったので、快適だった。
● 岩場の急な坂の上り降りは、信じられないくらいグリップ力を感じた。
● 全体的にタイトに締められている感じがあり、ソールも全く曲がらないので、平地や穏やかな坂では軽快には歩けない。
● 下り坂では、足が前にずれないように足首で支えている感覚があり、足首の前側に少し痛みを感じた。
見つかった課題は、足首の前側の傷みと、かかとの上下動によるマメの心配です。
いままで履いていた登山靴なら、これくらいの違和感は、履き慣らしていくうちに靴が馴染んで良くなってくると思うのですが、これほと屈強な靴だと、はたしてどこまで馴染んでくれるか、とても不安です。
(追記)
その後、さらに近郊の山を9時間連続で縦走してきました。
最後まで登りはとても快調でしたが、急な下りが続くと足首の前側が徐々に痛くなりました。特に階段状の下りは足首の曲げ量が大きくなり、足首前側に集中的に負担がかかって不快です。
心配していたかかとのマメはできませんでした。少し擦れた感覚があったので、念のため絆創膏を携行すれば、長時間登山でもそんなに心配することはないと思います。
指先は締め付け感がなく、指を握ったり伸ばしたり動かせて、とても快適でした。ただし、私には先端の横幅が少し広いような気がします。
前後左右に傾いた地面の着地時は、足首部分が柔軟に曲がって足裏全体で地面をホールドしてくれている印象を持ちましたが、足が靴の中で少しズレるような感覚があったので、靴紐の締め具合の微妙な調整が必要と感じました。
それと、スポルティバの靴紐は柔らかすぎて、普通の締め方ではすぐにほどけてしまいます。靴紐を別の物に交換するか、ほどけない締め方をマスターすることが必要ですね。私は、イアン・セキュア・ノットという結び方で対応しています。
簡単にすぐできる、靴紐がほどけない結び方を3つ紹介します(素早くできるイアン・ノット、おしゃれで強力なベルルッティ結びな…
9時間の連続歩行で重大な不具合はみつからなかったので、靴紐の締め方を徐々にマスターして、靴自体も少しずつ馴染んでくれば、お気に入りの1足になりえるような予感がしてきました。
雪山でも履いてみました。
行きつけの雪山でも試してみました。
踵にコバがあるので、セミワンタッチアイゼンが装着できます(私は一般のアイゼンを使用していますが)。
しっかりと足をホールドしてくれている感覚があり、急坂をキックステップで足掛かりをつける動作がとてもやりやすかったです。
厳密には冬用の靴ではないのですが、保温性のあるソックスを履けば、雪の中でも全く冷たくはないです。
もちろん、靴の中が濡れることもありませんでした。
まとめ
スポルティバ トランゴタワーGTXは、足首のホールド感とつま先の解放感が特徴だと思います。
足首の下部が締まっていてしっかりホールドされているわりには、上部分のパッドやタンが柔らかくて開放気味で、足首の前後左右の動作がしやすいです。
そして、岩場でのグリップ力は評判通りの実力でした。
スポルティバなどのイタリアメーカーの登山靴は、横幅が狭くて、幅広の日本人の足には合わないと思っていましたが、この靴は、スポルティバの中でも足先が幅広にできているようですので、多くの日本人登山者にフィットするのではないかと思います。
アッパーがとても堅牢に作られているので、しっかりとフィットするかどうか十分な試し履きが必要だと思います。
履いているうちにどれだけ足に馴染んでくれるかは未知数ですが、その点については、もっと履き慣らしてからレポートできたらと思います。
中高年のみなさん、足を怪我や疲労から守るため、少々お金をかけてでも、登山目的と自分の足型に合ったベストな靴でエンジョイしましょう。