中高年こそ雪山登山を楽しもう

雪山を登る登山者

積雪期の登山といえば、限られた上級登山者だけの楽しみのように感じる方もいらっしゃると思いますが、決してそうではありません。
それに、雪山と言っても3000m級の険しい山岳登山から、低山のなだらか雪面をスノーシューで颯爽と歩くスノートレッキングまで、楽しみ方はバラエティにあふれています。
自分の技量に合った山を選び、しっかりと準備をして、無理をせず安全に行動することで、私のような中高年の登山愛好者でも、十分に雪山登山を楽しむことができます

それでは、雪山登山の素晴らしさと、気を付けなければならない注意点などをお話しします。

 

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雪山登山の素晴らしさ

素晴らしい景色

雪山の絶景を眺める男性

一面の銀世界は感動ものです。ただそこに佇むだけでそっと心を癒してくれます。
また、空気が澄んでいるため、天気がいいと、雪の白と空の青のコントラストが素晴らしく、遠くまで見渡せるので、山頂からの眺めも最高です。

静かな環境

雪の情景

雪は全ての音を吸収します。
また、無雪期のような登山者の混雑もありません。
私は、心が洗われるようなこの静寂がとても好きです。

歩きやすい(トレースがある場合)

トレース沿いに進む登山パーティ

登山道の石や窪みなどは全て雪が覆ってくれて、なだらかな斜面へと変貌します。
しっかりとトレースがついていれば、雪道はとても歩きやすいです。
ただし、多量の新雪が積もっている場合や雪面がアイスバーンになっているときは歩くのが大変ですが、その苦労も雪山の楽しみのひとつだと思います。

新雪の感触

雪原のトレース跡

新雪を踏みしめる感触は、とてもいいものです。
特に早朝などで、誰も足を踏み入れていない場所を自分の足跡をつけてトレースを刻むと、とても爽快な気分になれます。

虫や害獣に悩まされない

夏季登山では、やぶ蚊、ブヨ、マダニ、山ビルなどに悩まされることが多いです。
特にテント泊をしたときは、虫の大群との戦いで神経をすり減らした経験が何度もあります。

また、いつもザックに熊鈴をぶら下げて歩いていますが、常に熊や猪に遭遇する危険と隣り合わせで、物音を感じるたびにドキドキしています。

雪山登山では、そういった不安が一切ないので、すごく快適です。

 

注意すべきポイント

紫外線対策

真っ青な空と雪の樹林

冬は寒いので、体感的に日焼けするイメージがわかず、ついつい油断しがちです。
しかし、雪は紫外線の反射率がとても高いので、太陽と雪面からのダブルパンチで、夏季以上に日焼けに注意する必要があります。
雪焼け」というやつですね。

山に入る前には、肌の露出部分にUVケアを忘れないようにしましょう。

また、雪面からの紫外線は、ダイレクトに目を傷めやすいため、サングラスやゴーグルの着用が必須です。

ウェアリング

冬登山のレイヤリング

雪山では、寒いからと言ってむやみに厚着することは禁物です。

冬の登山では、最初は寒くても歩くうちに汗ばむほど暑くなってきます。
真夏のように暑さで疲労することがなく快適なのですが、問題は汗が出始めてからの対処です。
冬季は気温が低くて汗が蒸発しにくい上に、身体全体をウェアで完全防護するため、汗でウェアが濡れたままになりやすいです。
身体が温もっているうちはいいのですが、休憩時などで身体が冷えてくると、汗で濡れたウェアが体温を奪ってしまいます

酷寒の雪山では、必要以上に体温を奪われるととても危険です。
それを防止するには、安易に厚着をするのではなく、薄めのウェアを何枚も重ね着をして、状況によって脱いだり着たりして体温調節を行うとともに汗の蒸散を促すことが大切です。
肌着(ベースレイヤー)は速乾性のもの、中間着(ミドルレイヤー)は保温性の高いもの、上着(アウターレイヤー)は暴風・防水・防寒性能が高いものを選びましょう。
また、重ね着をすることで、間に空気の層ができます。空気は最強の断熱素材になります。

首、手首、足首の保温対策も重要です。
この3つの「首」のまわりの皮膚は薄く、太い動脈が皮膚に近いところにあるため、「首」が冷えると冷たい血液が全身へ流れ、体全体が冷えてしまいます。これを防ぐために、ネックウォーマーや長めで保温性のあるグローブや靴下を着用して、体内の熱を逃がさないようにすることが大切です。

冬季のウェアリングの注意点については、次の記事も参考にしていただければと思います。

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雪山で防寒装備の男性

雪庇

冬は強い北西季節風が吹くため、稜線では風下(南東)の方に追いやられた雪が傘のように発達します。
これを「雪庇」と呼びます。

稜線にできた雪庇

登山者が歩く雪面からは、雪庇の状況がわかりにくいです。
ついうっかり雪庇の上に足を踏み入れると、陥没して滑落する危険性があります。

したがって、雪の積もった稜線を縦走する場合は、必ず風下側(南東側)を歩くように心がけましょう。

雪崩

雪崩が起きている様子

雪山登山で最も気を付けなければならないのが雪崩です。

● 地形: 山の谷筋や沢筋、凹状斜面、雪庇が崩落しやすい場所
● 斜度: 30 度から 50 度
● 植生: 樹木が少ないか、笹・芽・草が生えたり、平坦なガレ場
● 方位: 斜面の方向が、東向き又は東南向き(北西季節風により雪の吹き溜まりのできやすい風下斜面)

雪崩の種類には「表層雪崩」と「全層雪崩」があり、発生しやすい時期や条件が異なります。

雪崩のリスクを最小限にするためには、気象条件の把握と安全な登山ルートの選択が重要です。

【参考サイト】

ウェザーニュース

今週は北日本で気温の変化が大きくなる予想です。このような気象条件がきっかけで、山では雪崩(なだれ)が発生してしまう場合が…

道迷い

雪山では、積雪により登山道が埋没している上に、先人が歩いたトレースも消滅してしまっていることが多いです。
また、稜線に出ると、吹雪や濃霧で視界がゼロに近くなることもあります。いわゆるホワイトアウト状態です。
ホワイトアウトの稜線

そのような状況に遭遇し、安全が確保できないと感じたら、無理をせず、道に迷う前にさっさと下山しましょう。

私は、常にGPSを持ち歩いています。
トレースがなくても、視界が悪くなっても、GPSのおかげで道に迷うことはありませんでした。
ただし、GPSも万能ではなく、猛吹雪で衛星を捕捉できなくなったり、電池が消耗したり、故障したりすることも考えられるので、過信してはいけませんが、とても心強い道具になっています。

雪山に不可欠な装備

通常の登山装備のほかに、雪山登山になくてはならない装備は次のとおりです。

雪山用の登山靴

私の場合、雪山に履いていく登山靴は、無雪期の靴をそのまま使っています。

ポイントは、ソールが硬くてしっかりしていることだけです。
ソールが柔らかいと、アイゼンを取り付けて歩くことができません。

3シーズン用の登山靴でも、防水性能はしっかりとしていますし、靴下を選ぶことで保温対策はカバーできます。
突風が吹き荒れ、気温がマイナス20℃にもなるような3000m級の山へ行く場合は、保温対策のしっかりとした雪山専用の登山靴が必要ですが、そうでない限り、雪山だけのために靴を新調する必要はないと思っています。

アイゼン

雪山登山用アイゼン

雪山登山を象徴する定番装備ですね。

「アイゼン」とは、登山靴の下に履く爪の尖った道具で、この爪で雪を掴むことで、滑らずに歩くことができます。
凍り付いた雪面を歩くためには、アイゼンの着用が必須です。

アイゼンにも種類があり、雪山のコンディションによって適切な物を選ぶ必要があります。

アイゼンを履くと高下駄を履いて歩くような感覚になり、その上滑りやすい雪面を歩くので、普段と違った歩き方をマスターする必要があります。
また、アイスバーンの急斜面では、前爪でひっかけて登るようなテクニックも必要になります。

【参考サイト】

【YAMA HACK】日本最大級の登山マガジン - ヤマハック

「何本爪を選んだらいいの?」「軽アイゼンとの違いはなに?」そんな疑問の声があがるギアといえば、雪山登山の必需品“アイゼン…

スノーシュー(ワカン)

私や、雪山の状況によっては、アイゼンの代わりにスノーシューを持って行きます。
(以前はコンパクトで持ち運びが楽なワカンを使用していましたが、スノーシューの利便性にとりつかれてからは、今ではもっぱらスノーシュー派です)

最近のスノーシューはスグレモノで、ギザギザの刃がついていてアイゼンの代わりもしてくれたり、ヒール部分を持ち上げて角度を付けて斜面を歩きやすくする機構が備わってるものもあります。
ちなみに、私の愛用スノーシューは「MSR EVOエクスプローラー」というやつです。

雪深くて登山靴では膝上まで埋まってしまうような状態でも、傾斜のきつくない坂であれは、スノーシューで楽々歩くことができます。
アイゼンだと下半身が雪に埋もれてしまい、ラッセルするだけで体力が失われ、なかなか前に進むことができません。
最近のスノーシューは少々の坂でもへちゃらなので、深雪のときはアイゼンよりもスノーシューですね。

ピッケル

ピッケル

これも、雪山登山には欠かせない定番装備です。

主な使用目的は、バランスの保持滑落防止急斜面を登るときの補助などです。

しかし、私は、ピッケルは持って行くだけで、ほとんど使ったことはありません。
そもそもピッケルを使わなければいけないような過酷な雪山登山をしないからです。
唯一の使用目的であるバランスを保持するにも、断然トレッキングポールの方がすぐれているので、ピッケルはいつもザックに括り付けたままです。

よく、雪崩が発生する危険性のないなだらかな斜面をピッケルを持って歩いている登山者を見かけますが、ピッケルのような短くて先がとがっているものは、バランスと保つためには何の役にも立たず、邪魔になるだけだと思います。

だたし、雪山の状況は刻々と変化するので、私は、お守りのためにピッケルは必ず持って行きます。

トレッキングポール(スノーバスケット付き)

トレッキングポールのスノーバスケット

私の大切な雪山装備のひとつです。

冬季は、いつも使用しているトレッキングポールにスノーバスケットを取り付けて、必ず雪山に持って行きます。
スノーバスケットは必須です。これがないと、先端が雪の中に埋もれてしまって、まともに使えません。)

雪面では足をとられやすいので、バランスをとるためと足の疲労を防止するために、トレッキングポールはとても強力な味方になってくれています。

サングラス(ゴーグル)

雪山の強い紫外線から目を守るために、必ずサングラス(ゴーグル)は必要です。

私はメガネを掛けているので、メガネの上から装着できるオーバーサングラスを愛用しています。

標高が高く、気温がマイナス20℃にもなるような過酷な条件なら、隙間なく顔に密着できるゴーグルがいいと思いますが、私の場合は、目出し帽をかぶってこのサングラスをしていれば、少々の雪山でも快適に過ごせました。

スパッツ(ゲイター)

登山靴に巻かれた冬用スパッツ

足首から登山靴の中に雪が入らないようにするために、スパッツの着用は必須です。
また、アイゼン着用時には、アイゼンの刃で不意に足を傷つけてしまうことを防止すりためにも有効です。

雪山仕様の、丈が長くて、防水性・耐久性の高い、しっかりとした素材のものを選びましょう。

グローブ

雪山用グローブ

雪山で長時間過ごすと、身体の末端や露出部分が冷えてきます。
とくに指先の冷えが顕著で、指先が冷えると、いざというときに力が入らず、身体を支える動きもできなくなります。そして、症状が進むとやがて凍傷になり、最悪の場合は、指先が壊死して切断・・なんてことにもなりまねません。

指先を低温から守るため、冬のグローブ選びには注意しましょう。
ウエアと同じで、インナーグローブとアウターグローブの重ね着用が基本です。

インナーグローブは薄くて保温性と速乾性のあるメリノウールがいいです。これを着けておくことで指の暖かが保たれ、手作業する際にアウターグローブを脱いでも寒くないです。

アウターグローブには、暴風・防水性と保温性のあるのある防寒用グローブを着用します。
雪が入らないよう、裾丈が長い物を選びましょう。
私の経験ですが、アウターグローブは、指先が分かれているグローブよりもミトン型のグローブの方が快適でした。
指が離れたままだと、冷えを感じやすいです。指がくっついていれば、指先が冷たくなったと感じたら、手を揉んだり、手のひらの方へ丸めて温めることができます。
どうせ分厚いアウターグローブのままでは指先を使う細かい作業ができないので、指先が分かれている必要はないと思っています。
簡単な作業ができるような、3本指のグローブもあります。

目出し帽(バラクラバ)

登山用バラクラバ

唯一肌が露出する顔の防寒対策も重要です。

選ぶ基準は、保温性・防水性・呼吸のしやすさです。
また、首の部分まで保護できるものがいいです。

ネックウォーマーも重宝します。
首に巻くだけでなく、頭に巻いて耳が冷たくなるのを防ぐこともできます。
2個あれば、目出し帽の代わりにもなるし、着脱が容易なので、ちょっとした防寒用に重宝します。

万が一のための装備

GPS

登山用GPS

トレースがない状況やホワイトアウトに遭遇したときに、進むべき方向を教えてくれる強力な武器です。

最近のスマートフォンでもGPSアプリが利用できますが、電池の持ち、衛星の捕捉感度、操作性は専用のGPSにかなうものはありません。

ビーコン

雪山用ビーコン

雪崩に遭遇した時の捜索に使うもので、電波を発して雪に埋もれた遭難者の位置を特定します。

電波の発信側とと受信側にモードが切り替えられるようになっていて、通常は発信側にセットしておき、遭難者を捜索するときには受信側に切り替えて使います。

雪崩の起きる危険性のある山に登る場合は、雪山登山者のマナーとして携行する方が望ましいですね。

ツェルト

ツェルトをテント代わりに

ツェルトは、1年中を通して、緊急時のビバーク用に携行しています。

ツェルトの良いところは、とてもコンパクトなところです(収納時は缶ビール1本分程度の容積)。
また、ビバーク用のほかにに、簡易テントや休憩時の風よけ用にも使えて、工夫をすれば、その他にもいろいろな場面で活用できます。

ただし、使いこなすには、日頃からシミュレーションをして使い慣れておく必要があります。

 

終わりに

雪山登山では注意すべき点や、日頃から身に着けておくべき知識や技術も多いですが、自分の身の丈に合った楽しみ方をしていれば、雪山はとても楽しいものです。

「私は冬季はシーズンオフ」なんて言って自宅で縮こまっていないで、思いっきりスノーシーズンを謳歌しましょう!

ちなみに、私の登山シーズンは、やたら暑くて虫の多い夏ではなく、快適で素晴らしい感動に出会える冬なんです。
毎年冬が来るのを待ち焦がれています。

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