定年を迎えたら、活き活きとしたセカンドステージを暮らしていくために、生きがいをみつけることが大切であることを、以前にお話ししました。
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しっかりと目的意識を持って生きがいを感じながら余生を送っている人は、そうでない人に比べて健康で長生きしている人が多いという調査結果が、いろいろなところで紹介されています。
今回は、生きがいを持って暮らすことが健康寿命を延ばすということについて、考えてみたいと思います。
生きがいとは
広辞苑によれば、生きがいとは「生きる張り合い。生きていて良かったと思えるようなこと」と定義されています。
生きがいの感じ方は、楽しみに没頭しているとき、目標に向かって努力しているとき、人や社会とのつながりを感じているときなど、人によってそれぞれ異なります。
共通していることは、ポジティブな気持ちを持って充実した生活を送ることによって、幸福感に満たされているということだと思います。
平成25年に内閣府が行った「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によれば、高齢者のうちおよそ8割の人が生きがいを感じていると回答しています。
また、どんなことに生きがいを感じるかについては、男女間で違いがあり、それぞれ主なものは次のとおりです。
孫など家族との団らんの時(40.7%)
旅行に行っているとき(36.4%)
友人や知人と食事、雑談をしている時(50.9%)
おいしい物を食べている時(44.4%)
幸せそうな生活を送っている人でも「私には生きがいがない」と嘆く人もいます。
また、苦しそうな生活を送っている人でも、生きがいを持って積極的に人生を歩んでいる人もいます。
生きがいを持てない人の多くは、過去や未来のことに囚われてしまって、今現在を有意義に生活できないのだと思います。
脳がネガティブな思考に慣れてしまって、そこから抜け出せなくなってしまっているのです。
これは、真面目で思慮深い日本人の特質であると思います。
健康寿命とは
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で、制限されることなく自立して日常生活を過ごせる期間を指します。
2000年にWHO(世界保健機関)によって提唱されました。
(英名:Healthy life expectancy)
平均寿命との違い
説明するまでもないと思いますが、平均寿命は、生まれてから何年生きられるかという年数のことで、健康寿命は、そのうち健康で自立して生きられる年数のことを指します。
厚生労働省の平成28年の統計によると、男性では平均寿命が80.21歳、健康寿命が71.19歳であり、その差は8.84年にもなっています。 また、女性の場合は平均寿命が86.61歳、健康寿命が74.21歳であり、その差は男性よりも多く、何と12.35年もあります。
日本人は長寿世界一ですが、健康で長生きをしているかというと、ちょっと疑問を感じてしまいますね。
超高齢化社会を迎えるにあたって、厚生労働省では、2019年3月に「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」の報告書を公表し、健康寿命を延ばす目標として、「2040年までに男女ともに健康寿命を3年以上延伸する」ということを打ち出しました。
その具体的方策については触れていませんが、私としては、生きがいを持って活き活きと暮らせるような環境づくりをサポートしていただきたいと思っています。
生きがいと健康寿命との関連性についての研究から
アメリカの医学雑誌(2016年)
アメリカの医学雑誌「Psychosomatic Medicine」の第78巻第2号(2016年)に「生活のなかで高い目的意識を持っていることは、死亡率のリスクの減少と関連している」との記事が発表されました。
その記事によると、人生の目的(生きがい)を持っている人は、持っていない人の約5分の1の死亡率という結果が出たということです。
アメリカの大学研究チームの調査(2015年)
ニューヨーク州のマウントサイナイ医科大学の研究チームの調査により、人生でより高い目的意識をもっている人は、死亡リスクや心血管疾患の発症リスクが低く、健康寿命が長いことが明らかになりました。
調査の内容は、人生の目的と死亡率や心血管疾患発症リスクの関係について7年以上にわたって追跡調査したもので、それによって得た10件の論文や13万人以上のデータを分析したところ、人生で高い目的意識をもっている人は、そうでない人に比べ死亡率が17%減少し、心血管症が17%減少することが明らかになったということです。
社会保障審議会介護保険部会(2013年)
社会保障審議会介護保険部会が取りまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見」において、介護予防の推進については、機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく、地域の中で生きがいや役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど、高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチが重要であるとされました。
生きがいを持つと、なぜ健康が維持できるのか
生きがいを持つことで、どのように心身状態が変化し、それがどう健康維持へとつながるのかを、私なりに考えてみました。
目的意識を持つことで気持ちが前向きに
私は「写真」や「登山」の趣味に生きがいを感じています。
もっと写真が上手になりたい、今度はあの山に登りたい、重い荷物を担げるための体力を維持したい、と、知らず知らずのうちにいろいろな目標を立てています。
そうして目的意識を持ちながら暮らしていると、常に気持ちが前向きになっていることを感じます。
気持ちが前向きでいると、心が活き活きとしてきて、精神状態が健康でいられることを実感しています。
ルーチンワークで生活に張りが
生きがいが毎日のルーチンワークになると、生活にリズムが出てきて、心に張りと潤いを与えてくれます。
生きがいを失うと、何もすることもなくて、毎日をのんべんだらりと無為に過ごしてしまい、だんだん精神がすさんでくるような気がします。
ルーチンワークを持つことは、とても大切だと実感しています。
物事に集中することで、脳が活性化
生きがいを持てば、それに夢中になることができます。
物事に夢中になると、集中することで脳が活性化されます。
脳の活性化には、ぼけ防止に役立つだけでなく、リラックス効果、ストレスの軽減などの効果もあるそうです。
コミュニケーションが笑顔をつくる
生きがいが社会参加を促し、人と良好なコミュニケーションが保たれると、自然と笑顔が増えてきます。
「笑い」には驚くべき効果があることは、科学的にも実証されています。
ストレスの解消、免疫力のアップ、幸福感の醸成、ポジティブになれるなど、最高の良薬だと思います。
まとめ
人生をポジティブにとらえている人は、健康で長生きする傾向があることが明らかになってきています。
「生きがい」こそが、これからの人生100年時代を健康で充実して生きていくために非常に大切なのです。
皆さんも「生きがい」をみつけて、そして健康寿命を延ばして、健やかなセカンドライフを送りましょう!